投薬再開遅れ死亡、河北病院の過失認定 仙台高裁・逆転判決

通院していた県立河北病院で投薬治療が中止されたため、妻=当時(51)=の病気が再発し死亡したとして、村山地方の60代の夫ら遺族が県に約4700万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、仙台高裁は26日、遺族側を敗訴とした一審山形地裁判決を変更し、県に対し慰謝料など計2365万円の支払いを命じた。

妻は1994年7月、赤血球や血小板などが減少する特定疾患「再生不良性貧血」と河北病院で診断された。投薬治療で安定していたが、副作用があることなどから病院が2002年12月に投与を中止。その後再発し、03年4月から投薬を再開したものの、同10月に死亡した。

判決で小野洋一裁判長は、血液検査の数値から03年2月時点で症状の再発は明らかだったと指摘。「検査結果を十分に検討しなかったため再発を見落とし、投与を再開する義務を怠った」と病院側の過失を認定した。

その上で「2月時点で投与を再開していれば、死亡した10月時点で妻が生存していた可能性は高い」と指摘。死亡と、2月に投与を再開しなかったこととの間に「相当の因果関係がある」と認めた。

検査結果について、14年12月の一審判決は「治療再開が望ましかった」とする一方、副作用などを考慮し「直ちに再投与する義務があったとは認めがたい」としていた。

判決後、遺族は法廷を出るなり代理人弁護士の肩ににしがみつき「やっと報われた」と泣き崩れた。取材に対し、夫は「投薬を中止しなければ妻は今も生きていたはずだった。妻は帰ってこないが、全国で同様の事態が繰り返されぬよう、この判決が再発防止に生かされることを祈る」と話した。

県病院事業局は「判決内容を精査し、今後の対応を検討したい」としている。同局によると、記録が残る1996年以降、県に賠償金の支払いを命じる判決は初めて。

出典:山形新聞

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