医療ミス がん兆候共有されず 名大病院、50代男性が死亡

名古屋大病院(名古屋市昭和区)は19日、コンピューター断層撮影(CT)検査で大腸がんの兆候が見られたのに、医師の間で情報が共有されなかった結果、治療が約7カ月遅れて50代の男性が死亡する医療ミスがあったことを明らかにした。

同病院によると、男性は2014年1月、体調不良を訴えて救急外来で受診。CT検査の結果、放射線科医は、がんの疑いがあるとする画像診断報告書を作成した。ところが担当医には伝わらず、男性は、がん治療を受けないままになった。男性は同年8月、再び体調不良を訴えて受診。そこで大腸がんと診断され治療を受けたが、16年9月に死亡した。

病院は医療ミスの可能性があるとして院内に外部の専門家を交えた第三者委員会を設置した。【山田一晶】

出典:毎日新聞

医療事故 薬誤投与で80代女性患者死亡 青森市民病院

青森市民病院(青森市勝田1)は26日、20代の女性看護師が、入院していた80代の女性患者に別の患者の薬を誤って服用させる医療事故があったと発表した。女性患者は20日後に心不全で死亡した。看護師が投薬に関する院内マニュアルにある患者の名前の確認を怠り、低血圧症の女性患者に血圧を下げる薬を飲ませたという。

投薬ミスと死亡との因果関係について病院は「誤投薬が症状の悪化を招いた。(死亡の)主たる要因の一つ」と説明した。

病院によると、女性患者はうっ血性心不全や慢性腎不全などのため入院していた。9月24日、看護師から高血圧患者の薬を誤って手渡され、服薬後に血圧低下など症状が悪化。10月14日に死亡した。各患者の薬が入った容器にはそれぞれの名前が記されているが、看護師は確認していなかった。

遠藤正章院長は「患者やご遺族にご迷惑をおかけしてしまい申し訳ない」と謝罪した。【岩崎歩】

出典:毎日新聞

兵庫医大病院 使い捨ての医療機器、洗って再使用

兵庫医科大学病院(兵庫県西宮市武庫川町)は29日、厚生労働省の通知で手術後に廃棄するよう定められている医療機器を、洗浄して患者130人に再使用していたと発表した。同病院によると、感染症など患者の健康被害は確認されていないが、手術後1年間は経過観察を行うという。

この機器は、骨に穴を空けるドリルの先端に取り付ける金属製器具4種類。昨年12月から今年7月末にかけ、医療機器の洗浄を担当する複数の看護師が事前協議をせずに、手術で1度使った器具を洗浄、滅菌し、整形外科と脳神経外科で135回の手術に再使用していた。

7月中旬に厚労省から西宮市保健所に情報提供があり、8月1日、同保健所と近畿厚生局が立ち入り検査。その後、同病院を文書で是正指導した。

病院によると、看護師らは「厚労省の通知は知っていたが、滅菌して安全性が担保されていれば再使用しても問題ないと思っていた」と説明。同病院は看護師らの処分を検討する。

相談についてはフリーダイヤル0120・456・613(平日午前9時~午後4時45分)

(初鹿野俊)

出典:神戸新聞NEXT

ハブ被害で医療ミス、血清投与遅れ 男性が中部病院を提訴

昨年11月、ハブに左足をかまれ、沖縄県立中部病院に救急搬送されたうるま市の男性(42)に対し、ハブ抗毒素血清の投与が遅れるという医療過誤があったことが20日までに分かった。県側は「血清投与が遅れた」と過失を認めている。男性は足の筋肉の一部が壊死(えし)、補助器具なしでは歩行不能になったと主張している。

(資料写真)県立中部病院

男性が県に医療費や後遺障害慰謝料など約3400万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が19日、那覇地裁(森鍵一裁判長)であり、県側は血清投与の遅れの過失を一部認めつつも、「歩行不能にはなっていない」と反論。請求の棄却を求めた。

訴状によると、男性は同年11月26日午後10時15分ごろ、自宅でハブにかまれ、県立中部病院に搬送された。病院側にハブにかまれたことを伝えたものの、医師は搬送から8時間以上経過してもハブ抗毒素血清を投与しなかったとされる。

翌27日午前7時44分、医師はハブによる傷と判断し、血清を投与した。男性は治療の遅れで、血清の効果が得られず足の筋肉の一部が壊死。病院は手術を繰り返したものの、男性は左足関節の屈折ができなくなり、補助器具なしでは歩行不能になったとされる。

県側の担当者は「傷がハブかどうか確証が得られず、副作用のリスクから血清投与が遅れた」と説明した。

出典:沖縄タイムスプラス

医療ミスで名大病院を提訴 遺族、2億7000万円求める

名古屋大病院(名古屋市昭和区)の検査で3年にわたって肺がんを見落とされたため、治療が遅れて同市内の男性=当時(50)=が死亡したとして、男性の妻が名大病院を運営する名古屋大を相手取り、約2億7千万円の損害賠償を求めて名古屋地裁に提訴したことが分かった。提訴は8月4日付。名大病院側は医療ミスを認めているが、示談交渉が折り合わなかった。

訴状や原告側代理人などによると、別の病院で腎臓がん手術を受けた男性は2007年6月、転移の有無などの検査のために名大病院泌尿器科へ通い始めた。半年に一度、胸部から下腹部のコンピューター断層撮影(CT)画像を撮ったが、関わった医師10人以上は「再発はない」と診断し続け、11年12月に男性が胸の痛みを訴えた際も「異常なし」と判断した。

男性は12年5月、他の病院で検査を受けて肺がんが見つかった。既に進行した状態で、14年3月に死亡した。

男性の死後、名大病院が設けた調査委員会は、過去のCT画像にはがんとみられる陰影が写っており、遅くとも09年5月にはがんの可能性に気づくことができたと認定。「主治医に画像の異常を診断する専門性がなく、放射線科も体制が不十分だった」と、3年にわたってがんを見落とした「医療ミス」を認めた。

原告側代理人によると、名大病院側はその後、男性の妻と示談交渉を始め1億円余りの賠償金を提示。ただ、原告側は、逸失利益の算定が低く、がんを見落とした3年間の治療費の返金も含まれていないことなどに納得せず、提訴に踏み切った。

原告側代理人は「治療費や逸失利益について、きちんと対応してほしい」と主張。名大病院は「係争中のことなのでコメントは控えたい」としている。

出典:中日新聞

 

2017年7月までに674件の医療事故が報告 調査制度

今年(2017年)7月に医療事故調査・支援センター(以下、センター)に報告された医療事故は22件。一昨年(2015年)10月の医療事故調査制度スタートから、累計で674件の医療事故が報告され、このうち6割超(63.5%・428件)で院内調査が完了し、遺族や医療機関からのセンターへの調査依頼は累計で42件となった―。

こうした状況が、日本で唯一のセンターとして指定されている「医療安全調査機構」から9日に公表されました(機構のサイトはこちら)。

内科・整形外科・心臓血管外科で、それぞれ3件の医療事故が発生

医療事故調査制度は、事故の責任が誰にあるのかを追及するのでなく、事故の原因を究明することで「再発防止を目指す」仕組みとして、一昨年(2015年)10月にスタートしました。院長など医療機関管理者が予期しなかった「医療に起因し、または起因すると疑われる死亡または死産」が発生した場合、管理者は事故発生の旨をセンターに報告します(例えば、極めて重篤な状態で救急搬送され、管理者が死亡を予期していた症例などは報告の対象外となる)。この報告を起点として、当該医療機関で事故原因の調査(院内調査)を行い、調査結果をセンターに報告するとともに、遺族への説明を行います(関連記事はこちら)。センターでは、事故事例を集積していく中で具体的な再発防止策などを練り、今年(2017年)3月に「中心静脈穿刺合併症に係る死亡の分析―第1報―」を作成・公表しています(関連記事はこちら)。

医療事故調査制度の概要、「院内調査」を第一に行い、「医療事故調査・支援センター」がそれを補完する格好で調査が行われ、再発防止策に結びつける
医療事故調査制度の概要、「院内調査」を第一に行い、「医療事故調査・支援センター」がそれを補完する格好で調査が行われ、再発防止策に結びつける

我が国唯一のセンターとして指定されている医療安全調査機構では、毎月、医療事故の報告状況を公表しています(前月の状況はこちら)。今年(2017年)7月には、医療事故が新たに22件報告され、制度発足からの累計報告件数は674件となりました。

7月の報告は、病院からが21件、診療所からが1件で、診療科別に見ると▼内科3件▼整形外科3件▼心臓血管外科3件―などで多くなっています。

2017年7月に、新たに22件の医療事故が報告され、制度発足(2015年10月)からの累計で674件の医療事故が報告されている
2017年7月に、新たに22件の医療事故が報告され、制度発足(2015年10月)からの累計で674件の医療事故が報告されている

医療事故が発生した場合、医療現場では「患者が予期せぬ死亡を遂げたが、センターに報告すべき医療事故だろうか?」「センターへの報告はどのように行えばよいのか?」といった疑問が生じると思われます。一方で遺族側の中には「家族が医療機関で死亡したが、医療事故として報告されていない。隠蔽されているのでは?」といった不信感をぬぐいされない方も決して少なくないでしょう。そこでセンターでは医療機関や遺族からの相談に対応しており、今年(2017年)7月には、新たに150件の相談がセンターに寄せられました。制度発足からの累計は3429件となっています。新規相談の内訳を見ると、医療機関からが85件、遺族などからが53件、その他・不明が12件という状況です。

医療機関からの相談内容を見ると、「報告の手続き」56件が多く、医療機関からの相談の65.9%を閉めています。一方、「医療事故に該当するか否かの判断」は19件(医療機関からの相談の22.3%)にとどまり、制度の浸透、運用の改善(医療事故該当性の判断などを標準化するための「支援団体等連絡協議会」設置など)などの効果と言えます(関連記事はこちらこちら)。

もっとも、遺族などからの相談の中身を見てみると、依然として「医療事故に該当するか否かの判断」が最多で35件、遺族などからの相談の66.1%を占めています。この中には「制度開始前の事例」「生存事例」など、前述した報告対象に含まれないケースも入っており、「一般国民への制度周知」が重要なキーワードになると考えられます(関連記事はこちら)。

センターへの相談は2017年7月に150件あり、うち85件が医療機関から、53件が遺族などからのものとなっているが、相談の中には「制度の対象外の事例」も含まれている
センターへの相談は2017年7月に150件あり、うち85件が医療機関から、53件が遺族などからのものとなっているが、相談の中には「制度の対象外の事例」も含まれている

冒頭に述べたとおり、医療事故調査制度の目的は「再発防止」にあります。したがって、「事故が発生した医療機関自らが、原因究明に向けた調査を行う」(その際、院内のルールや医療内容を点検することになる)ことで、院内体制や職員の意識が改善され、事故防止につながると期待されます。今年(2017年)7月に新たに院内調査が完了した事例は14件で、制度発足からの累計では428件となりました。これまでに報告された全674件のうち63.5%で院内調査が完了している計算です。調査完了割合は、前月(2017年6月)とほぼ同水準(0.1ポイント増)で、調査スピードが頭打ちになっているのか、今後の状況を見守る必要があります。

医療事故を報告した医療機関のうち、院内調査が済んだものは2017年7月に14件、制度発足からの累計で428件で、報告された事故全体の63.5%となった
医療事故を報告した医療機関のうち、院内調査が済んだものは2017年7月に14件、制度発足からの累計で428件で、報告された事故全体の63.5%となった

ところで、遺族の中には「院内調査結果に納得できない」「院内調査が遅すぎる(何かを隠すために時間稼ぎをしているのではないか)」と感じる人もいると思われます。一方、医療機関側でも、小規模で「自力での院内調査が困難」というところもあります(医師会や病院団体などの支援団体がサポートを行う仕組みあり)。そこで、「遺族や医療機関がセンターに調査を依頼」できる仕組みも用意されています。今年(2017年)7月にセンターへなされた調査依頼は2件ありました。いずれも遺族からの依頼です。制度発足からの累計では42件(遺族から31件、医療機関から11件)となっています。このうち37件が「院内調査結果報告書の検証中」(院内調査が適切に行われたかの確認)、1件が「院内調査結果報告書検証準備作業中」、1件が「院内調査の結果待ち」となっており、センター調査も着実に進んでいることが分かります。

出典:メディ・ウォッチ

鼻の手術で医療ミス 今年4件目、賠償金1300万円支払う

甲府市は28日、市立甲府病院で2014年、患者の血管を傷付ける医療ミスがあり、賠償金約1300万円を支払ったと発表した。同病院で医療ミスが明らかになるのは今年4件目。樋口雄一市長は定例会見で「ミスは1件でもあってはいけない。病院側には再発防止を徹底するよう指導した」と謝罪した。

市によると、患者は中央市の40代男性。副鼻腔(びくう)炎の手術で鼻から内視鏡を入れる際、右目付近の血管を誤って傷つけた。手術後、男性は視野が狭くなったり、視力が低下したりする症状が残り、市はミスを認めて賠償金として6月までに約1300万円を支払ったという。

同病院では今年だけで3件の医療ミスが発覚。2月には鼓膜の手術の際に不適切な消毒液を使って、甲斐市の70代男性と中央市の50代女性の難聴を悪化させ、計850万円の示談金を支払っていたことが明らかになった。

3月には甲府市の50代女性の手首の腫瘍を摘出する手術をした際、神経を損傷させるミスをして、70万円の示談金を支払っている。市は「心からおわびしたい」としている。【滝川大貴】

出典:毎日新聞

内視鏡検査後に男性死亡 遺族と病院3800万円で和解

新潟県厚生連が運営する糸魚川総合病院(糸魚川市)で内視鏡検査を受けた糸魚川市内の男性(当時71)が4日後に死亡したのは、病院側の過失によるものだとして、男性の遺族が損害賠償と慰謝料を求める訴訟を新潟地裁に起こし、同病院が3800万円を支払うことで20日に和解が成立した。関係者への取材で分かった。

県厚生連は朝日新聞の取材に「相手方もあり、何もコメントできない」とし、男性が死亡した経緯などの説明を一切しなかった。原告側は「3800万円を支払うということは、病院が医療過誤を認めたということだ」と話している。

訴状などによると、男性は膵(すい)臓がんの疑いがあり、2015年10月に同病院で「ERCP」と呼ばれる内視鏡検査を受けた。しかし、検査による合併症ですい炎を発症し、4日後に死亡した。

男性の遺族は昨年、同病院に対し、損害賠償と慰謝料計約5700万円の支払いを求めて提訴。男性が検査の1時間後に腹痛を訴えていたのに、担当医が適切な措置をしなかったとし、「医師の過失と患者の死亡に因果関係がある」と主張していた。

出典:朝日新聞デジタル

7歳死亡、刈谷豊田総合病院側認め 6600万円支払命令

7歳の女児が脳梗塞(こうそく)で死亡したのは、脳出血で入院した病院が適切な管理をしなかったのが原因として、愛知県知立市の両親が、同県刈谷市の刈谷豊田総合病院を運営する医療法人「豊田会」に約7400万円の損害賠償を求めた訴訟で、名古屋地裁は2日、病院側のミスを認め、計約6600万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

判決理由で末吉幹和裁判長は画像診断の結果や意識障害などの症状から、頭蓋内の圧力が高くなっていることが認識できたと指摘。「圧力を下げるために、外科手術を行うなど適切な対応を取る注意義務があったのに怠った」と判断した。

判決によると、女児は2011年10月18日に頭痛を訴え、同病院で診断を受けた。脳出血が見つかり入院、治療を受けたが症状は改善せず、激しいけいれんを起こした。24日には広範囲で脳梗塞を発症し、31日に死亡した。

出典:毎日新聞

無痛分娩で母子が植物状態の悲劇 「人生が変わった」

「分娩(ぶんべん)室に入っていく前は本当に元気だったのに」。夫の悲痛な訴えが胸をつく。出産時に麻酔で痛みを和らげる「無痛分娩」をめぐり、妊産婦が死亡するなどの重大事例が相次いで発覚している。中でも京都では、同じ産婦人科医院でミスがあったとして3家族が損害賠償請求訴訟を提起。このうち1家族が7月、京都市内で記者会見した。車いすに乗った妻と長女とともに記者会見に臨んだ家族は「1人の医師の対応で、このような人生になってしまった。二度とこのようなことが起こらないように、原因を分析しないといけない」とも訴えた。一連の事態を重く見た日本産婦人科医会は無痛分娩について初めての提言を出す方針を決め、厚生労働省も近く研究班を立ち上げて実態把握に乗り出すという。

麻酔後に急変

7月29日、車いすに乗った女性と幼い子供が、それぞれ夫と祖母に押されて記者会見場に現れた。2人とも寝たきり状態で話すことはできない。会見中も、血流を良くするために体を揺すったりするなどのケアをしていた。それでも家族は「植物状態になっている現状を伝えなければ」との思いから、2人を同席させたと説明した。

訴えを起こしているのは、無痛分娩の処置で重い障害が残ったというロシア人女性の元大学准教授、エブセエバ・エレナさん(40)=京都市左京区=と長女のみゆきちゃん(4)。それに、日本人で大学教授のエレナさんの夫(55)と、エレナさんの母親で医師のボイコ・リュボビさん(63)。京都府京田辺市の医院「ふるき産婦人科」に対し、計約9億4千万円の損害賠償を求めている。

訴状などによると、エレナさんは平成24年11月、同医院でみゆきちゃんを無痛分娩により出産するための処置を受けた。

この際エレナさんは、脊髄を保護する硬膜の外側(硬膜外腔)に腰から注射し、局所麻酔薬を投与する硬膜外麻酔を受けた。だが約20分後に容体が急変し、意識を失った。

救急搬送先の病院で帝王切開によりみゆきちゃんは誕生したが、エレナさんは「心肺停止後脳症」と診断され、現在まで意識が回復せず植物状態に。みゆきちゃんも「新生児低酸素性虚血性脳症」と診断され、出産直後から植物状態のままとなってしまった。

夫らは、麻酔の針が本来より深い位置のくも膜下腔に達していたミスが疑われるほか、高濃度の麻酔薬を過剰投与したことが原因と訴える。

午前3時まで看護

「(エレナさんが)分娩室に入っていく前は本当に元気で、本人もこんなことになるとは思っていなかっただろう」と当時を振り返った夫。「硬膜外麻酔はきちんとしていれば問題はない。問題があったとしても早期に対応していたら、今のような状態にはならなかった」と悔しさをにじませた。

長期間の入院後、エレナさんは25年7月から、みゆきちゃんは27年6月から、自宅療養に。エレナさんは「今後、長期にわたり24時間介護の必要な状態が続く見込み」と診断された。みゆきちゃんは退院時の状態や今後の治療について「自発呼吸はほとんどみられず、音や光への反応もみられない」「24時間の介助が必要」とされ、ロシアからリュボビさんが来日し、夫とともに24時間態勢で在宅の介護が始まった。

会見で配布された資料には、洗顔や歯磨き、体位交換、カテーテルの洗浄など、午前5時半に起床してから翌日午前3時までの介護状況が記載されていた。

「分刻みで処置をすることが決まっていて、毎日がその繰り返し」と夫。大学教授としての研究時間を母子の介護に割いている日々だという。

高齢女性らに広がり

無痛分娩は局所麻酔薬で下半身の痛みを和らげ妊婦の疲労を軽減する出産方法。もともとは欧米を中心に行われていた施術方法だが、近年は日本でも人気が高まってきている。

日本産婦人科医会によると、疲労やストレスが少なく産後の回復も早いため、体力面など出産に対する不安を抱えている高齢女性に浸透。小規模な医療機関での施術が中心となっているという。日本産科麻酔学会によると、同会員が無痛分娩を実施している施設は27年現在、全国に約160カ所に上る。

安全対策を講じれば、リスクが高い出産方法ではないというが、医療機関の体制が十分でないなどの問題から、今回、重大事例が相次ぐ事態となった。

会見では、医師でもあるリュボビさんが、産婦人科医が1人で出産を扱う個人医院のリスクを指摘した。

リュボビさんによると、ロシアでは出産時に複数の医師が対応するといい、「同医院には産婦人科医が1人しかいなかった」とした上で、出産前のエレナさんからインターネットで見つけた同医院で出産をしたいと伝えられた際、「個人医院では出産しないほうがいい」と反対したことを明らかにした。

リュボビさんは「出産は簡単なものではなく、あらゆることが起きる。救急に対応する医師が必要」と訴えた。

国なども対策へ

厚生労働省によると、無痛分娩をめぐり大阪、京都、兵庫の4医療機関で、妊産婦の死亡など少なくとも6件の重大事例が発覚した。

こうした状況を受け、日本産婦人科医会は今年6月、出産を扱う全国約2400医療機関を対象に無痛分娩に関する調査を実施し、件数や診療体制についての実態把握を行った。調査結果は、近く発足する厚労省の研究班が分析し、安全対策に生かす。

また、今夏に公表予定の母体安全に関する提言の中には、医会が過去にまとめた無痛分娩に関する調査結果が初めて盛り込まれる見込みだ。

エレナさんとみゆきちゃんの介護を続ける夫は「2人の状態が変わってしまうことが一番心配。(今は)問題なく毎日を過ごせていることがうれしい」と話す。リュボビさんも、みゆきちゃんの親指が曲がるようになったことや、エレナさんが「ママ」と数回つぶやいたことなどに喜びを感じたといい、「いつかいいときがくると信じている。常に希望を持っていきたい」と力強く話した。

大変な介護生活の中、支え合っている家族。エレナさん家族ら3件の訴訟を起こされているふるき産婦人科は「取材はお受けしません」としている。

出典:産経WEST