「医療ミス認めてほしい」 女児に脳障害 慶応大病院を提訴

生後3カ月の女の子が受けた心臓手術で、一体、何が起きたのか。今も、重い障害に苦しむ女の子の両親が、慶応義塾大学病院を相手に、21日、裁判を起こした。
群馬県に住む5歳の女の子、高橋心音(ここね)ちゃん。
脳に重い障害があり、歩くことも、食べることもできない。
母の亜希子さんは「抱っこをしていると、安心するんだと思うんですけど、目は、ほとんど見えていない状況」と話した。
父の歩さんは「寝たきりなので、足の骨も曲がってきて、長さも違うような状態」と話した。
心音ちゃんは、生まれつき心臓に穴が開いていたため、生後3カ月の時に、心臓手術を受けた。
2010年12月の手術直前、母親の呼びかけに、元気な声で応えていた心音ちゃん。
しかし、手術後、様子は一変した。
数週間たっても、心音ちゃんの意識は、はっきりしない状態だった。
手術から、およそ1カ月後の2011年1月、低酸素脳症と診断された。
亜希子さんは「この子はどうなっていくのかとか、もうどうしていいのか、わからなくて…」と話した。
低酸素脳症とは、脳に酸素が行き渡らなくなり、脳機能に障害が残る病状を指す。

病院から家族への説明(2011年1月22日録音)
はっきりした理由というのがわからない。おそらく、手術の時に起こったんじゃないかなと、わたし個人は思っている。

手術中に起きた可能性が高いとしつつも、はっきりとした原因はわからないと説明した病院側。
この前日、病院では、医師らによる会議が行われていた。
その議事録には、「送血カニュラの挿入位置は高めにした」と書かれていた。
この議事録は、何を意味しているのか。
昭和大学の南淵明宏教授は「脳に障害が起こる可能性は、全ての手術にあり得ます。今回の原因は何だかわからないが、『いつもより高い位置に送血管を入れたんです』と、これが原因だと思いますということを、(会議では)言っているのではないか」と話した。
南淵教授によると、議事録から推測できることは、心臓手術の際には、血管に人工心肺の管を挿入して、心臓の代わりに全身に血液を送る。
この時、管を通常より高い位置に入れたことで、脳の一部に十分な血液を送ることができなかった可能性があるという。
管を高めの位置に入れることは、手術の性質上、あり得るということだが、さらに、議事録には、「『脳モニター』は取っていたのか 取っていない」という記録も残されていた。
南淵教授は「脳のモニターを使っていなかったと(書かれている)。(脳モニターを)やっていたら、ひょっとしたら防げたんじゃないかと、(病院側が)反省されているように見えます」と話した。
病院側は、指などの血流を調べる機械を使っていたと説明しているが、脳に酸素が足りているかを調べる「脳モニター」は使っていなかった。
南淵教授によると、この「脳モニター」は、心臓手術では10年ほど前から広く使われているという。
手術から5年、心音ちゃんはずっと、音を立てながら呼吸をし、栄養は、鼻にチューブを通してとっている。
亜希子さんは「医療ミスだったんだということを、認めてもらいたい」と話した。
両親は「脳モニター」を使わなかったため、脳への血流障害に気づくことができなかった可能性があるなど、3つの注意義務違反を挙げ、慶応義塾大学病院に対し、賠償金およそ2億円を請求する訴えを起こした。
病院側は、FNNの取材に対し、「今の時点でお答えできることはありません」とコメントしている。

出典:FNN

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