三重大病院(津市)で昨年九月、開腹手術をした県内在住の男性患者の腹部に、ガーゼを置き忘れる医療ミスがあったことが、同病院への取材で分かった。三重大は一月二十五日付の病院ホームページ(HP)で事案を公表するとともに、伊藤正明病院長名の謝罪文を掲載。ガーゼの数をチーム全員で確認するといった再発防止策を講じた。
病院によると、男性は昨年九月に腹部の手術を受け、経過観察で一月に画像検査をしたところ、体内に異物がある疑いが判明。三日後に手術をすると、開腹手術の際に置き忘れたガーゼが残っていたことが分かった。
病院側は男性と家族に謝罪した上で、経緯を第三者機関の公益財団法人「日本医療機能評価機構」(東京)に報告。病院によると、男性の術後の経過は良いという。
ガーゼの置き忘れを防ぐため、三重大病院は手術前後に使用したガーゼの数を数えて確認することや、ガーゼの一部にエックス線を通さない銅線を織り込んで、エックス線撮影で発見できるよう対策をしてきた。
HPによると、今回の手術でも同様の手順でチェックをしたが「いずれも十分に機能していなかった」ため、ミスが起きたという。
ミスを受け、病院は「使用するガーゼは種類ごとに一枚ずつ離して数える」、「複数の医師で、手術した箇所がすべてエックス線撮影の範囲に入っているか確認する」といった再発防止策を講じた。
HPでは、ミスの原因や検証内容の詳細について明らかにしておらず、病院の担当者は本紙の取材に「HPで公表した内容以上は非公表だ」と返答した。三重大の広報部門を統括する企画総務部によると、今回のミスに関して記者会見の予定はないという。
◆詳しい情報の開示望まれる
<医療過誤問題に詳しい堀康司弁護士(名古屋市)の話> ホームページで概要を速やかに公表したことは評価できる。二つの手段が講じられていたのに、取り忘れが生じた根本原因の分析結果にはHPで言及されていないが、再発防止策が有効かどうか評価する上で必要な情報であり、他の病院が広く教訓を共有するためにも、より詳しい情報開示が望まれる。
出典:中日新聞