慈恵会医科大学附属病院

2人とも”医療事故”で死亡した夫婦の悲劇【慈恵医大病院】

画像診断の情報量急増に病院が対応できない

画像診断でがんの見落としが続発している。

昨年1月、東京慈恵医科大学病院(東京・西新橋)で主治医がCT(コンピューター断層撮影)検査の画像診断の結果を見落として、70歳代の男性が死亡した。これ以降、同年10月には名古屋大学病院、今年6月には千葉大学病院と横浜市立大学病院、翌7月には東京都杉並区の民間病院で、がんの見落としが発覚した。

千葉大病院のケースでは患者9人に画像診断ミスがあり、そのうち4人の治療に影響し、2人が死亡している。

これまで厚生労働省は全国の病院に文書で注意喚起を求めてきた。だが、見落としが相次ぐ背景には、画像診断技術の高度化にともなって情報量が急増し、病院側が十分に対応できなくなっていることがある。その結果、画像診断を担当する放射線科医と患者の主治医との連携不足が生じている。

東京・港区西新橋の東京慈恵会医科大学付属病院玄関(写真=時事通信フォト)

慈恵医大のミスが連続発覚のきっかけ

慈恵医大病院で見落としによる患者死亡という医療事故が発覚したのは、2017年1月31日のNHKの報道がきっかけだった。

患者は東京都町田市に住む72歳の男性で、1年前のCT検査で肺がんの疑いがあった。しかし、主治医が検査結果を確認せず、約1年間も放置した。がんは処置ができないほど進行し、男性は2017年2月16日に亡くなった。

担当医が検査結果を見逃す。考えられない医療事故だ。大病院がなぜ、こんな単純なミスを犯すのだろうか。

慈恵大病院で死亡した男性の妻も、別の大学病院で医療事故に遭って死亡している。夫婦そろって理不尽な医療事故に巻き込まれていたのである。

出典:PRESIDENT Online

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医療過誤に画期的な対策 診断報告書を要約して患者に交付

東京慈恵会医大付属病院(丸毛啓史院長、1075床)は画像診断部、内視鏡部、病理部が作成した診断報告書を要約し、原則として全ての患者に交付することを決め、2018年 4月から実施に踏み切った。画像や病理検査で患者のがんが見つかっていながら医師間の連絡不十分のため放置されるという医療ミス事件が続いたことからの対応だが、思い切った改善策は全国の病院の注目を浴びそうだ。

  • 画像は慈恵医大柏病院(Wikimedia commonsより、Waka77さん撮影)
画像は慈恵医大柏病院(Wikimedia commonsより、Waka77さん撮影)

肺がんの発見が遅れた

一番のきっかけは、肝臓病で同病院に通院していた70歳の男性患者が貧血で、15年10月夜、救急入院してきたこと。CT検査で肺に異常が見つかり、当直医は診断報告書に記載した。しかし、翌日から担当した肝臓病チームは画像は見たものの診断報告書は読まず、患者は退院後も 1年間通院したが気づかれないままだった。16年10月に再入院した時に撮影したCT検査で肺がんが確認、手遅れで17年 2月に亡くなった。

この患者は05年に妻を別の病院の医療事故でなくしていた。それ以後、被害者団体である「医療過誤原告の会」の役員として、医療事故を無くす活動を続けていただけに、大きな話題になった。また、遺族や原告の会は再発防止を強く求めていた。

同病院ではこのケースの他に 5例の見逃し例があった。外部委員も含めた診療情報共有改善検討委員会が調査分析を進め、17年 6月、委員会は報告書のコピーを患者に交付するなどの対策を答申していた。

同病院では18年 1月から電子カルテを導入したこともあり、患者に分かりやすく表現した患者用診断報告書を主治医が患者に交付する機能を加えた。また、こうした運用のための職員も配置した。

(医療ジャーナリスト・田辺功)

出典:JCASTニュース

肺がん放置の男性亡くなる 妻も医療事故で犠牲

東京慈恵会医科大病院で、肺がんの疑いがあると指摘された男性(72)の画像診断報告書を主治医が確認せず、約1年間放置された問題で、病院は17日、男性が16日に亡くなったと発表した。男性は14年前の妻の医療事故をきっかけに、医療安全を求めて活動しており「自分の問題を契機に、全国で対策が徹底されてほしい」と願っていたという。
病院によると、男性は肝臓の病気で同病院に通院しており、2015年10月、貧血で緊急入院した。検査の結果、肺がんの可能性が指摘されたが、主治医らは画像診断の報告書を確認せず、男性は退院した。16年10月になり、男性の肺がんが見つかったが、すでに治療できない状態だった。病院側は「1年前に主治医が肺がんの可能性をきちんと受け止めず、結果的に発見が遅れた。その時点なら手術できる可能性があった」と謝罪した。

この男性の妻も03年、別の大学病院でカテーテルが血管外に入る事故で意識不明になり、その後、死亡した。これをきっかけに、男性は医療事故の被害者や遺族でつくる医療過誤原告の会(宮脇正和会長)の役員として、被害者の相談に乗るなどの活動をしていた。

宮脇会長によると、昨年12月に見舞った際、男性は「こういう事態になって悔しい。もっと生きたい」と無念さを語り、再発防止を託されたという。

画像診断報告書の確認不足で治療の遅れなどが生じるケースは全国で起きており、日本医療機能評価機構によると15年には11件の報告があった。宮脇会長は「こうした情報は医療機関などに提供されているが、活用される仕組みがない」と話し、厚生労働省などに再発防止の徹底を求めていくという。【下桐実雅子】

出典:毎日新聞

慈恵会医科大学附属病院の青戸病院からの医療事故報告

2002年に慈恵会医科大学附属病院の青戸病院で、手術により60歳男性患者が脳死となり1ヶ月後に死亡するという医療事故がありました。

前立腺癌の患者に対し、担当医師3人が腹腔鏡手術を行いました。しかし、うまくいかずに大量の術中出血を起こし、それでもより確実な開腹手術をせずに腹腔鏡下手術を続行し、開始からほぼ12時間後にようやく切り替えました。このため、手術終了後に患者は大量出血による脳死状態になり、約1カ月後の12月8日にお亡くなりになりました。

腹腔鏡下手術とは、腹腔鏡という医療器具を用いた高度先端医療です。これは、従来の開腹手術と比較して、患者の負担が小さく、術後の臥床期間を短縮することができるメリットがあります。しかし、手術の術野が狭く、遠近感が掴み難いなど難易度が高いというデメリットがありました。

この医師ら3人は腹腔鏡下手術の執刀経験がなく、さらに悪いことに、1名だけは以前に腹腔鏡手術の助手を2回務めていたが執刀医として実施したことはなく、他の2名の医師に至っては腹腔鏡手術の見学すらありませんでした。にもかかわらず、手術を無理に進め、患者を死に至らしめた事故であります。

 

この事故に対して、慈恵医大病院は、青戸病院医療事故のお詫びと題して、報告書を開示しています。概要としては、謝罪はもちろんのこと、事故の原因についての説明、ご家族に対する説明不足があったこと、院内の体制についての不備など、多角的に観点から報告がなされていました。さらに、今後の再発防止策も記載されており、過ちを認め、真摯に受け止めていることが感じられました。

もちろん、ご遺族にとっては到底許しがたいことではあることでしょう。亡くなられた患者さま、ご遺族のかたがた、お悔やみ申し上げます。

しかし原因を明らかにし、受け止め、今後の改善を図ろうとする本病院は、良い対応なのではないかと思います。こうした医療に対する誠意ある意識が、医師、病院、医療界全体へと徐々に広がっていけば良いと思います。広がっていくべきです。