ふるき産婦人科

「無痛分娩で障がい」、和解金と病院側が「遺憾の意」 ふるき産婦人科

 無痛分娩で出産した際の医療ミスで長女に脳性まひが残ったとして、両親が産婦人科に損害賠償を求めていた裁判が、大阪高裁で和解しました。

 2011年、京都府に住む母親が京田辺市の「ふるき産婦人科」で、無痛分娩で産んだ長女は脳性まひが残り3歳で亡くなりました。両親は病院などに損害賠償を求めて提訴していましたが、一審の京都地裁は医師の過失を認めながらも障がいとの因果関係を認めず、訴えを退け両親が控訴しました。

 和解は去年12月に成立し、7400万円の和解金からすでに支払われた補償金を差し引いた5840万円を病院側が両親に支払うほか、長女が障がいを負ったことについて「厳粛に受け止め遺憾の意を表す」ことが盛り込まれました。母親は和解前の取材に「このようなことは二度と起きてほしくない」と話していました。

出典:MBS

無痛分娩で母子が植物状態の悲劇 「人生が変わった」

「分娩(ぶんべん)室に入っていく前は本当に元気だったのに」。夫の悲痛な訴えが胸をつく。出産時に麻酔で痛みを和らげる「無痛分娩」をめぐり、妊産婦が死亡するなどの重大事例が相次いで発覚している。中でも京都では、同じ産婦人科医院でミスがあったとして3家族が損害賠償請求訴訟を提起。このうち1家族が7月、京都市内で記者会見した。車いすに乗った妻と長女とともに記者会見に臨んだ家族は「1人の医師の対応で、このような人生になってしまった。二度とこのようなことが起こらないように、原因を分析しないといけない」とも訴えた。一連の事態を重く見た日本産婦人科医会は無痛分娩について初めての提言を出す方針を決め、厚生労働省も近く研究班を立ち上げて実態把握に乗り出すという。

麻酔後に急変

7月29日、車いすに乗った女性と幼い子供が、それぞれ夫と祖母に押されて記者会見場に現れた。2人とも寝たきり状態で話すことはできない。会見中も、血流を良くするために体を揺すったりするなどのケアをしていた。それでも家族は「植物状態になっている現状を伝えなければ」との思いから、2人を同席させたと説明した。

訴えを起こしているのは、無痛分娩の処置で重い障害が残ったというロシア人女性の元大学准教授、エブセエバ・エレナさん(40)=京都市左京区=と長女のみゆきちゃん(4)。それに、日本人で大学教授のエレナさんの夫(55)と、エレナさんの母親で医師のボイコ・リュボビさん(63)。京都府京田辺市の医院「ふるき産婦人科」に対し、計約9億4千万円の損害賠償を求めている。

訴状などによると、エレナさんは平成24年11月、同医院でみゆきちゃんを無痛分娩により出産するための処置を受けた。

この際エレナさんは、脊髄を保護する硬膜の外側(硬膜外腔)に腰から注射し、局所麻酔薬を投与する硬膜外麻酔を受けた。だが約20分後に容体が急変し、意識を失った。

救急搬送先の病院で帝王切開によりみゆきちゃんは誕生したが、エレナさんは「心肺停止後脳症」と診断され、現在まで意識が回復せず植物状態に。みゆきちゃんも「新生児低酸素性虚血性脳症」と診断され、出産直後から植物状態のままとなってしまった。

夫らは、麻酔の針が本来より深い位置のくも膜下腔に達していたミスが疑われるほか、高濃度の麻酔薬を過剰投与したことが原因と訴える。

午前3時まで看護

「(エレナさんが)分娩室に入っていく前は本当に元気で、本人もこんなことになるとは思っていなかっただろう」と当時を振り返った夫。「硬膜外麻酔はきちんとしていれば問題はない。問題があったとしても早期に対応していたら、今のような状態にはならなかった」と悔しさをにじませた。

長期間の入院後、エレナさんは25年7月から、みゆきちゃんは27年6月から、自宅療養に。エレナさんは「今後、長期にわたり24時間介護の必要な状態が続く見込み」と診断された。みゆきちゃんは退院時の状態や今後の治療について「自発呼吸はほとんどみられず、音や光への反応もみられない」「24時間の介助が必要」とされ、ロシアからリュボビさんが来日し、夫とともに24時間態勢で在宅の介護が始まった。

会見で配布された資料には、洗顔や歯磨き、体位交換、カテーテルの洗浄など、午前5時半に起床してから翌日午前3時までの介護状況が記載されていた。

「分刻みで処置をすることが決まっていて、毎日がその繰り返し」と夫。大学教授としての研究時間を母子の介護に割いている日々だという。

高齢女性らに広がり

無痛分娩は局所麻酔薬で下半身の痛みを和らげ妊婦の疲労を軽減する出産方法。もともとは欧米を中心に行われていた施術方法だが、近年は日本でも人気が高まってきている。

日本産婦人科医会によると、疲労やストレスが少なく産後の回復も早いため、体力面など出産に対する不安を抱えている高齢女性に浸透。小規模な医療機関での施術が中心となっているという。日本産科麻酔学会によると、同会員が無痛分娩を実施している施設は27年現在、全国に約160カ所に上る。

安全対策を講じれば、リスクが高い出産方法ではないというが、医療機関の体制が十分でないなどの問題から、今回、重大事例が相次ぐ事態となった。

会見では、医師でもあるリュボビさんが、産婦人科医が1人で出産を扱う個人医院のリスクを指摘した。

リュボビさんによると、ロシアでは出産時に複数の医師が対応するといい、「同医院には産婦人科医が1人しかいなかった」とした上で、出産前のエレナさんからインターネットで見つけた同医院で出産をしたいと伝えられた際、「個人医院では出産しないほうがいい」と反対したことを明らかにした。

リュボビさんは「出産は簡単なものではなく、あらゆることが起きる。救急に対応する医師が必要」と訴えた。

国なども対策へ

厚生労働省によると、無痛分娩をめぐり大阪、京都、兵庫の4医療機関で、妊産婦の死亡など少なくとも6件の重大事例が発覚した。

こうした状況を受け、日本産婦人科医会は今年6月、出産を扱う全国約2400医療機関を対象に無痛分娩に関する調査を実施し、件数や診療体制についての実態把握を行った。調査結果は、近く発足する厚労省の研究班が分析し、安全対策に生かす。

また、今夏に公表予定の母体安全に関する提言の中には、医会が過去にまとめた無痛分娩に関する調査結果が初めて盛り込まれる見込みだ。

エレナさんとみゆきちゃんの介護を続ける夫は「2人の状態が変わってしまうことが一番心配。(今は)問題なく毎日を過ごせていることがうれしい」と話す。リュボビさんも、みゆきちゃんの親指が曲がるようになったことや、エレナさんが「ママ」と数回つぶやいたことなどに喜びを感じたといい、「いつかいいときがくると信じている。常に希望を持っていきたい」と力強く話した。

大変な介護生活の中、支え合っている家族。エレナさん家族ら3件の訴訟を起こされているふるき産婦人科は「取材はお受けしません」としている。

出典:産経WEST

「麻酔ミスで母子とも植物状態」家族、京都の医院を提訴

帝王切開の際の麻酔のミスにより、妊婦だった女性(38)と生まれてきた長女(1)がともに寝たきりの植物状態になったとして、女性の夫(37)と両親らが、京都府京田辺市の医院「ふるき産婦人科」を相手取り、計約3億3千万円の損害賠償を求める訴訟を京都地裁に起こしたことが5日、分かった。

原告側代理人によると、女性が受けた麻酔は、脊髄を保護する硬膜の外側(硬膜外腔)に細い管(カテーテル)を入れ、局所麻酔薬を投与する硬膜外麻酔。胎児への影響はほとんどないとされ、出産時の痛みを和らげる「無痛分娩(ぶんべん)」でも一般にこの方法がとられているという。

同地裁で5月に開かれた第1回口頭弁論で医院側は請求棄却を求めた。取材に「適切な措置をとった」として、全面的に争う姿勢を示した。

訴状などによると、女性は第2子妊娠中から同医院で定期健診を受け、逆子と判明したため帝王切開で分娩することになった。平成28年5月に同医院に入院し、産婦人科医師から硬膜外麻酔を受けたが、直後に容体が急変。意識不明となり、同府宇治市内の総合病院に救急搬送された。

女性は搬送中に一時心肺停止となったが、蘇生。同病院で帝王切開が行われ、長女が生まれた。しかし女性は最近まで植物状態で、今も首から下が動かない。長女も出産直後から現在まで意識不明の状態が続き、この病院で脳に回復困難な損傷を受けたと診断された。

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原告側は本来、硬膜外腔に注入すべきだった麻酔薬を、さらに奥の「くも膜下腔」に注入するミスがあったと主張。その結果、女性は脊髄を通じて大部分の神経に麻酔がかかる「全脊髄麻酔」の症状に陥り、気道確保や搬送の処置も遅れたと訴えている。

出典:産経WEST