
帝王切開の際の麻酔のミスにより、妊婦だった女性(38)と生まれてきた長女(1)がともに寝たきりの植物状態になったとして、女性の夫(37)と両親らが、京都府京田辺市の医院「ふるき産婦人科」を相手取り、計約3億3千万円の損害賠償を求める訴訟を京都地裁に起こしたことが5日、分かった。
原告側代理人によると、女性が受けた麻酔は、脊髄を保護する硬膜の外側(硬膜外腔)に細い管(カテーテル)を入れ、局所麻酔薬を投与する硬膜外麻酔。胎児への影響はほとんどないとされ、出産時の痛みを和らげる「無痛分娩(ぶんべん)」でも一般にこの方法がとられているという。
同地裁で5月に開かれた第1回口頭弁論で医院側は請求棄却を求めた。取材に「適切な措置をとった」として、全面的に争う姿勢を示した。
訴状などによると、女性は第2子妊娠中から同医院で定期健診を受け、逆子と判明したため帝王切開で分娩することになった。平成28年5月に同医院に入院し、産婦人科医師から硬膜外麻酔を受けたが、直後に容体が急変。意識不明となり、同府宇治市内の総合病院に救急搬送された。
女性は搬送中に一時心肺停止となったが、蘇生。同病院で帝王切開が行われ、長女が生まれた。しかし女性は最近まで植物状態で、今も首から下が動かない。長女も出産直後から現在まで意識不明の状態が続き、この病院で脳に回復困難な損傷を受けたと診断された。
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原告側は本来、硬膜外腔に注入すべきだった麻酔薬を、さらに奥の「くも膜下腔」に注入するミスがあったと主張。その結果、女性は脊髄を通じて大部分の神経に麻酔がかかる「全脊髄麻酔」の症状に陥り、気道確保や搬送の処置も遅れたと訴えている。
出典:産経WEST