医療ミスで九大病院に1.5億円支払い命令

 九州大病院(福岡市東区)で、脳腫瘍の疑いが検査で指摘されていたにもかかわらず、医師が見落として後遺障害を負ったとして、福岡県の30代女性が同病院に慰謝料など約1億9700万円を求めた訴訟の判決が21日、福岡地裁(波多江真史裁判長)であった。波多江裁判長は、見落としと後遺障害との因果関係を認め、同病院に約1億5700万円の支払いを命じた。

 判決によると、女性は2006年8月に食欲不振などを訴えて同病院心療内科を受診。同年10月に入院し、頭部CT検査を受けた。検査で1・6センチの脳腫瘍の疑いが確認され、放射線科の医師が報告書に書き込んだが、心療内科の医師が見落としていた。

 11年11月に自宅で転倒し、同病院の検査で脳腫瘍による水頭症と判明。腫瘍は約6センチに増大しており、見落としから約5年2カ月後の12年1月に摘出手術を受けた。女性は記憶力の低下や、左腕や左足にしびれなどの後遺障害が残り、15年に精神障害者保健福祉手帳を取得した。

 波多江裁判長は「見落としがなければ、定期的な経過観察で脳腫瘍の増大を発見し、早期に手術を受けることができた」とし、見落としによる過失と後遺障害との因果関係を認定。そのうえで逸失利益や将来介護費などから賠償額を算定した。

 判決後、女性の母親は記者会見で「病院には二度とこのようなことがないようにしてほしい」と話した。九州大は「結果として治療が遅れたことは、大変申し訳なく思う。判決文が届き次第、対応を検討したい」とコメントした。【宗岡敬介】

出典:毎日新聞

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